いかくん漂流記

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【エイリアン】感想・ネタバレ|ギーガーの異形がすべてを変えた、SFホラーの金字塔

エイリアン キービジュアル
©1979 Twentieth Century Fox Film Corporation

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SFホラーの金字塔。以降のシリーズはもちろん、他のジャンルの作品にも多大な影響を与えたことは言うまでも無い。1979年公開。リドリー・スコット監督の長編2作目にして、彼を一気に世界的な映画監督に押し上げた作品だ。脚本はダン・オバノン。音楽はジェリー・ゴールドスミスが担当した。

逃げ場のない宇宙船 — 台詞が消えていく恐怖

逃げ場の無い宇宙船の中での惨事、緊迫感がすごい。後半に向けて台詞が少なくなり、よりいっそう緊張感を増す。これは計算された演出だろう。乗組員が減り、船内が静かになるほど、観ている側の呼吸も浅くなっていく。広大な宇宙空間にいるはずなのに、画面から伝わるのは息苦しいほどの閉塞感。宇宙の「広さ」ではなく「逃げられなさ」を突きつけてくるのがこの映画の恐怖の本質だと思う。

リドリー・スコットはこの映画以前、CM業界で約2,000本もの作品を手がけていた。限られた時間と空間で強烈な印象を残すCM演出の手腕が、この密室劇にそのまま活きている。閉鎖空間の圧迫感、照明の使い方、画面の切り取り方。すべてに無駄がない。

H・R・ギーガーという最重要功労者

でもやはりこの作品、シリーズにおいての最重要功労者はエイリアンのデザインをしたギーガー先生であることは明白。これがプレデターみたいなチンケな擬人生命体ならここまでの恐怖は演出出来なかったであろう。

H・R・ギーガーはスイス出身のアーティストで、人体と機械が融合した「バイオメカニカル」と呼ばれる作風で知られていた。もともとはインテリアデザイナーを志していたが、すぐにビジュアルアートに転向。エアブラシを駆使した独特の画風で頭角を現し、1973年にはプログレッシブ・ロックバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマーのアルバムジャケットを手がけて国際的な注目を集めた。エイリアンのデザインは彼の絵画「ネクロノミコンIV」がベースになっている。ギーガーはエイリアン本体だけでなく、異星人の宇宙船の外観・内部、スペースジョッキー、卵、フェイスハガー、チェストバスターまで、異星生物に関わるほぼすべてのデザインを手がけた。この仕事で1980年のアカデミー視覚効果賞を受賞している。

実はフォックスの役員や脚本家たちは、ギーガーの作品を見て起用をためらっていたという。「こんなものを描く男はイカれている」とまで言われていたらしい。それを押し切ってギーガーを連れてきたのがリドリー・スコットの慧眼だった。もしスタジオの判断でギーガーが外されていたら、この映画の恐怖は半減していたに違いない。

ノストロモ号の質感 — 模型が生むリアリティ

ノストロモ号の船内も然り、異星人の宇宙船も内部のデザインが凝っていていま観ても感嘆する。宇宙船外観も模型を使って撮影しておりスターウォーズ同様、独特のリアリティや質感を生み出している。

CGが存在しない時代に、実物のミニチュアモデルと手作業のセットで作り上げた映像。だからこそ画面に重みがある。今のCG映像のようなツルッとした均一さがなく、セットの隅々に生活感や経年感がにじんでいる。「使い込まれた宇宙船」という設定に説得力があるのは、実物のセットが持つ質感のおかげだろう。

リドリー・スコットは完全主義者で、ポストプロダクション中にも気に入らなかったミニチュア特撮のシーンを自ら撮り直している。彼が制作前にフォックスに提出した緻密なストーリーボードは「リドリーグラム」と呼ばれ、カメラの位置やレンズの種類まで書き込まれていた。このストーリーボードの出来に感心したフォックスは、製作費を400万ドルから850万ドルへと倍以上に引き上げたという。

1979年にこれを撮るということ

1979年にこれを撮るかー。すごいなぁ。それが率直な感想だ。46年前の映画が今でもこれだけの緊張感を持っている。技術が進歩した今の映画を観慣れた目で見ても、古さを感じるどころかむしろ新鮮ですらある。

シガニー・ウィーバーにとってもこの映画は出世作だった。もともと脚本段階では乗組員は全員男性だったが、制作側が「観客の予想を裏切るため」に主人公リプリーを女性に変更した。結果として、自分の力で生き残る女性主人公という像は映画史に大きな影響を残した。ウィーバーはその後「エイリアン」シリーズ4作に出演し、「ゴーストバスターズ」「アバター」など数々の大作を経て、ハリウッドを代表する女優になっている。

監督のリドリー・スコットもまた、この作品を足がかりに「ブレードランナー」「グラディエーター」「ハンニバル」と傑作を量産していく。エイリアンから始まったキャリアは、2020年代の今もなお現役で続いている。ちなみにリドリーは続編「エイリアン2」の監督を降ろされた時のことを「傷ついた」と語っており、エイリアンへの思い入れの強さがうかがえる。一本の映画がこれだけ多くの才能を世に送り出し、ジャンルそのものの方向性を決定づけた。金字塔と呼ばれるのは伊達じゃない。

作品情報

項目内容
タイトルエイリアン(Alien)
監督リドリー・スコット
脚本ダン・オバノン
出演トム・スケリット / シガニー・ウィーバー / ジョン・ハート / イアン・ホルム / ヤフェット・コットー
エイリアンデザインH・R・ギーガー
音楽ジェリー・ゴールドスミス
公開年1979年(日本公開:1979年7月21日)
ジャンルSF / ホラー
上映時間116分
受賞アカデミー視覚効果賞 / サターン賞3部門 / ヒューゴー賞

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